研究概要 |
自己免疫疾患の大半は原因不明であるため抗核抗体検査などの非特異的診断法、ステロイド剤などの非特異的治療法で対処しているのが世界の現状である。研究代表者はシェーグレン症候群の病因と密接に関連した責任抗原として分子量120KDの臓器特異的自己抗原を分離精製することに成功した(SCIENCE276:604,1997)。得られたN末端20残基のアミノ酸解析によりこの自己抗原蛋白は分断化された膜骨格蛋白α-fodrin断片であることが明らかとなった。本研究ではシェーグレン症候群に特異的な診断法、及び治療法の開発を目的として実施された。特異的診断法の開発のために、多数の患者血清を用い、自己抗原蛋白を抗原とした高感度の特異的ELISA法の樹立を試みた。抗原として大量の精製自己抗原蛋白が必要とされるため大腸菌を用いた組み替え蛋白を作製し多数の患者血清または唾液との反応性の精度を検討しELISA法の確立を試みた。即ち、α-fodrin遺伝子(全長7083bp)全領域をカバーする3種類のpGEX発現ベクター(JS-1/pGEX4T-2、2.7A/pGEX4T-1、3'DA/pGEX4T-2)を用いてGST融合蛋白を精製し、3種類の精製リコンビナント蛋白、および制限酵素により切断した多数の融合蛋白を各々固相化したプレートを作成し、患者血清との反応性を検討した。その結果、PCR法にて合成したGST融合蛋白の中でN末76-2278領域蛋白に最も患者血清との高力価の反応性が確認され、疾患特異的診断法の確立が示唆された。特異的治療法の開発のために当研究室で維持されているシェーグレン症候群疾患モデルを用いてプロテアーゼ阻害剤などによる実験的治療効果につき検証した結果、モデル動物にカスパーゼ活性阻害剤Z-VADを投与することにより著明な病態抑制効果のあることが確認され、シェーグレン症候群免疫制御の特異的治療法が期待された。
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