研究概要 |
EBウイルスはBリンパ球に特異的に発現している補体レセプター(CR2,CD21)を介して細胞へ吸着し、一部の霊長類しか感染しない。このことがEBウイルスはBリンパ球指向性、狭い宿主域を規定している。EBウイルスの感染には吸着の段階でのバリアーに加えて、EBウイルスプラスミドの維持機構が関わっている。我々は各種動物細胞にCD21を強制発現することにより、ラットの細胞にEBウイルス感染することが明らかにした。以上の結果は、ヒトCD21発現すればラットのリンパ系細胞でEBウイルスが感染する可能性が示している。この背景に基づいてヒトCD21発現トランスジェニックラットを作製し、リンパ球細胞へのEBウイルス感染が成立するかを検討した。 ラットのリンパ系細胞にEBVレセプター(CD21)を発現せるために,免疫グロブリンプロモーター/エンハンサーの下流にCD21のcDNAを連結したDNAを構築した。常法に従い、ホルモンによる過剰排卵の後に交尾させたラットより受精卵を採取し、上記DNA構築をマイクロインジェクションした後、仮親となる偽妊娠ラットの卵管内に移植した。得られた仔ラットの中から導入遺伝子を有する仔ラットをPCR法、サザんブロット法により選択し、ヒトCD21トランスジェニックラットの系統を樹立した。樹立されたトランスジェラットのリンパ系細胞におけるヒトCD21の発現をRT-PCR、フローサイトメーターにより確認した。上記ラットのリンパ系細胞へのEBV感染能はRT-PCR,蛍光抗体法により検討した。 (1)上記ヒトCD21トランスジェニックラットのリンパ系細胞においてはヒトCD21の発現が認められた.同じ系統のウェルドラットリンパ系細胞ではCD21の発現は全く認められなかった.(2)ヒトCD21トランスジェニックラットのリンパ系細胞にEBVを感染させてEBERの発現はRT-PCRにより確認し、EBNA蛍光抗体法陽性の細胞も認められた。以上の結果からラットのリンパ系細胞にヒトCD21を発現させることによりEBVの感染成立が明らかとなった。
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