研究概要 |
関節リウマチ(RA)の病理は、炎症、滑膜増殖、関節破壊の三つの段階があり、RAの治療はこれらの各段階を制御して最終的に関節破壊を阻止することを目的とする。 現在のRA治療は、主に炎症の抑制を目的としている。しかし、炎症においては多くの因子が存在し、単独の因子の抑制のみでは他の経路が活性化される可能性がある。新しい治療薬も、炎症の是正のみを目的とする限り、このような限界に至る可能性がある。 一方、RAの病態には、炎症の面だけではなく、滑膜線維芽細胞の増殖とそれによる関節破壊という面がある。滑膜線維芽細胞の増殖や軟骨、骨破壊性といった形質を変換することができれば、直接パンヌスの形成を阻止して関節の破壊を防ぐことができると考えられる。 そこで、細胞周期を制御する分子によって、滑膜線維芽細胞の増殖を直接抑え、関節破壊を阻止することを試みた。細胞周期制御分子であるサイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)遺伝子p16^<INK4a>もしくはp21^<Cip1>による細胞周期制御療法は、RA動物モデルに著効し、滑膜組織でのTNF-α,IL-1β,IL-6などの炎症性サイトカイン産生を抑制した。そこで、p16^<INK4a>とp21^<Cip1>細胞周期制御療法の分子基盤を明らかにするため、p16^<INK4a>とp21^<Cip1>の強制発現によるRA由来滑膜線維芽細胞(rheumatoid synovial fibroblasts : RSF)における遺伝子の発現変化を解析した。さらに、この現象の背景であるp21^<Cip1>によるシグナル伝達分子や転写因子への影響を検討し、細胞周期制御療法の治療効果の分子機構を解析したところ、炎症性メディエーター受容体の発現や細胞内シグナル伝達経路の抑制を介していることが明らかとなった。
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