研究課題/領域番号 |
12557049
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
桑名 正隆 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50245479)
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研究分担者 |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
池田 康夫 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00110883)
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キーワード | 血栓症 / 自己抗体 / エピトープ / 自己反応性T細胞 / リン脂質 / 抗原提示細胞 |
研究概要 |
抗リン脂質抗体症候群(APS)は血栓症、習慣性流産をきたす疾患で、患者血清中にはβ2-グリコプロテインI(β2GPI)などリン脂質結合蛋白を認識する抗リン脂質抗体が検出される。昨年度までの研究成果により、APSにおける抗β_2GPI抗体産生は正常のT細胞レパトワに存在するβ_2GPI反応性CD4^+T細胞の活性化によることが明らかになっている。β_2GPI反応性T細胞はDRB4^*0103拘束性にリン脂質結合ドメインを含むエピトープ(p276-290)を認識する。ただし、p276-290は抗原提示細胞(APC)におけるnativeなβ_2GPIからのプロセッシングでは作られないことから、何らかの要因によるAPCでのp276-290の提示がβ_2GPI反応性T細胞の活性化を介して抗リン脂質抗体産生を誘導する可能性が高い。そこで、本年度はAPS患者由来のβ_2GPI反応性CD4^+T細胞クローン株を用いてAPCにおけるp276-290の発現機構を追究した。まず、各種APCを用いてp276-290反応性T細胞株の活性化能を調べたが、いずれのAPCもnativeβ_2GPI存在下でT細胞増殖を誘導できなかった。次に、各種β_2GPI抗原を用いてp276-290反応性T細胞株の活性化能を検討すると、T細胞増殖はnativeおよびnicked β_2GPIにより誘導されず、reduced β_2GPIと大腸菌で発現させたβ_2GPI融合蛋白により誘導された。さらに、native β_2GPIとリン脂質リポソームの複合体を取り込ませた樹状細胞はp276-290反応性T細胞株の増殖を誘導した。9種類の異なるリン脂質とβ_2GPIの複合体の抗原性を検討したが、その中でカルジオリピン、牛脳由来のフォスファチジルセリンのみがβ_2GPI反応性T細胞の活性化を誘導した。したがって、β_2GPIが特定のリン脂質と結合するとAPCによりp276-290が発現されることが示され、APS発症のメカニズム解明に有用な知見と考えられた。
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