研究課題
ヒト免疫不全ウイルスのTAT蛋白のうち、N末端の11アミノ酸であるprotein transducing domain (ptd)に融合させた各種蛋白は、マウスへの腹腔内投与によって全身の臓器に分布される。ptd配列の後ろに、C型肝炎ウイルス(HCV)のNS3プロテアーゼによって切断されるペプチドを介在させてカスパーゼ3に結合させることによって、HCV感染細胞でのみカスパーゼ3が活性化され、細胞死をもたらすことが可能となる。HCVの感染していない細胞ではNS3プロテアーゼが存在しないため、カスパーゼ3は活性化されず細胞は障害されない。インターフェロン治療によってHCV感染肝細胞が高度に減少するも撲滅されていない患者に、本ポリペプチドを投与することによって、HCV感染肝細胞を排除して慢性C型肝炎を治癒させることが可能である。カスパーゼ3発現コンストラクトpTAT-Casp3-NS3pcsを以下のごとく作成した。HIV-1のTAT蛋白のうちprotein transducing domain (ptd)を、カスパーゼ3のPro領域を取り除いた部分に結合する。これにNS3プロテアーゼ切断領域(NS3-NS4A境界)配列を挟んでカスパーゼ3のp17、さらにNS3プロテアーゼ切断領域(NS4B-NS5A境界)配列を挟んでp12を発現する。これを大腸菌に発現させ精製した。一方、我々はHCVのNS3プロテアーゼを肝で発現しているHCV非構造領域遺伝子(NS)トランスジェニックマウスを樹立した。このマウス肝では、NS2からNS5BまでのHCVタンパクが低レベルに発現しており、C型肝炎ウイルス増殖の基礎モデルとなっている。プロテイン・トランスダクションによるC型肝炎治療法開発のため、このマウスモデルにptd結合カスパーセ・ペプチドを投与している。
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