研究概要 |
私どもは、アジア人種に高率にみられる視神経脊髄型多発性硬化症(OS-MS)は、通常型MS(C-MS)に比べ、臨床的にも、免疫遺伝学的にも、またミエリン抗原に対する自己反応性T細胞応答においても異なることを報告してきた。近年、MSの主要な標的であるオリゴデンドロサイトの起源は単一でなく、視神経・脊髄と大脳とではlineageが異なる可能性が指摘されており、OS-MSの病巣の形成には、視神経・脊髄に特異な自己抗原が存在する可能性が考えられ、以下の研究を開始した。 平成12年度、ヒト脊髄由来cDNA発現ライブラリーを作成し、SEREX法にてOS-MS患者血清のスクリーニングを開始した。OS-MS患者8名の血清(1名に対しおよそ5×10^5〜1×10^6個のファージ)の免疫スクリーニングにより11の陽性クローンが検出された。その塩基配列を決定した結果、5つの候補自己抗原が同定された(Rabaptin-5,HSP105,NSD1,EST(KIAA0610,KIAA1640))。 平成13年度、候補自己抗原の内、Rabaptin-5,HSP105について、リコンビナント蛋白を作成し、ELISA法を用いて抗体価を測定したところ、抗Rabaptin-5-IgG抗体は、MS群で有意な陽性率の上昇は認められなかったが、抗HSP105α-IgG抗体は、MS群において血清ならびに髄液において有意な上昇が認められた。しかしながら、OS-MSと通常型MSとの間においては有意な差は認められなかった。HSP105に対する自己反応性T細胞の検討では、HLA-DPB1^*0501を有するMS群において反応性の亢進が示唆された。以上のことより、SEREX法にて単離しえたHSP105が、MSの新規自己抗原であることが示された。今後更に、NSD1、EST(KIAA0610,KIAA1640)についてもMS患者における抗原反応性を検討していく予定である。
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