研究課題/領域番号 |
12557062
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小室 一成 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30260483)
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研究分担者 |
吉田 勝哉 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (10191579)
脇本 公嗣 田辺製薬株式会社, 先端医学研究部, 研究員
山崎 力 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60251245)
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キーワード | NCX / ノックアウトマウス / 圧負荷 / 心肥大 / SERCA2 / カルシウム / 心エコー |
研究概要 |
Na^+/Ca^<2+>交換体(NCX)は、神経や筋細胞などの興奮性細胞の細胞膜に存在し、Na^+とCa^<2+>の交換輪送に関与する。しかしNCXに対する特異的な阻害薬や刺激薬が存在しないことから、心筋細胞における役割についてはまだ十分に解明されていない。そこで今回、NCXのヘテロノックアウトマウスを用いて心機能に対するNCXの作用を検討した。野生型(WT)マウスとこのヘテロノックアウト(KO)マウスの胸部大動脈を縮窄し、圧負荷に対する心臓の影響を手術3週間後に調べた。シャム手術では、両者のマウス間で心機能の変化は認められなかったが、圧負荷後ではWTマウスに比べKOマウスでより高い左室圧と良好な左室収縮能を示した。左室圧所見や心エコー所見からKOマウスでは拘束性の拡張障害パターンを示し、WTマウスよりも著明な左室肥大と間質の線維化を認めた。また圧負荷によりWTではSERCA2の発現が低下したが、KOマウスでは変化がみられなかった。L型Ca^<2+>チャネルやライアノジン受容体の発現は両マウス間で差はなかった。これらの結果から、KOマウスでは圧負荷に対して心機能を正常に保ち、より著明な心肥大を生じることが明らかになった。NCXの減少により細胞内や小胞体内のCa^<2+>濃度が増加することが、この機序の一つとして考えられた。実際、単離した心筋細胞を用いたin vitroでの実験では、WTマウスに比ベKOマウスで細胞内Ca^<2+> transientと筋小胞体Ca^<2+>濃度の増加を示した。KOマウスとWTマウスではL型Ca^<2+>チャネルの発現量に差がないことから、NCXの減少により筋小胞体内のCa^<2+>濃度が増加し、その結果Ca^<2+> induced Ca^<2+> releaseが増強してCa^<2+> transientも増加すると考えられた。
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