研究概要 |
平成12度の研究の主眼は、TaqMan PCR法の至適条件の確立に置いた。TaqManプローブは5′末端をリポーター(Fluorescein系の蛍光色素)、3′末端をクエンチャー(Rhodamine系の蛍光色素)で蛍光ラベルした20〜30塩基のoligonucleotideで、多型性部位に応じて2種類用意され、リポーター色素を変えることにより、多型が検出される。プローブがインタクトな状態では蛍光共鳴エネルギーの稼働現象により、リポーターの蛍光は抑制されているが、primerが伸張しプローブ結合部位に達すると、TaqDNAポリメレースの5′ヌクレアーゼ活性によりプローブが分解し、リポーター色素が遊離、さらにクレンチャーが離れることによりリポーター色素特有の蛍光を発するため、各対立遺伝子(アレル)の多型を同定できる。本法の開発は数年以上前に遡るが、大部分は定量的RT-PCR法に用いられており、SNP検出に成功した例は数えるほどである。TaqMan PCR法では、プライマーとプローブの設計と、至適温度条件の設定が最も重要であり、極端にGC richな領域や単塩基の連続した配列には不向きであることが判明したが、ランニングコストは従来の制限酵素断片長多型(PCR-RFLP)よりも安く、1検体あたり50〜100円程度、実験時間は約1/10に短縮可能であった。500検体をPCR-RFLPとTaqMan PCR法の両者で検討した結果、1例の相違も認められず、再現性、信頼性は良好であった。アンジオテンシノーゲン遺伝子(AGT)のT235アリルは高血圧感受性を高めることが知られているが、我々はこれと完全な連鎖不平衡にあるAGT/T+31C多型を4,000人規模の一般集団で検討し、同多型が高血圧家族歴と関連があることを示し(Hypertension,2001,in press)、本法が大規模検体の処理に正確、かつ安価に対応できることが明らかになった。
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