DNAアレイ技術が注目を集めているが、圧倒的に高頻度である遺伝性多因子疾患で、多数のSNPsを検討する本態性高血圧症や糖尿病といった疾患の解析には、統計学的に十分なパワーと廉価性が要求されることから、大量検体収集の解析には不向きである。このため中小規模の施設でも検討可能な遺伝子解析技術の確立が必要であり、定量的RT-PCRにおける定量性を高め、Western blottingと同様の信頼性を得ることを目的として開発されたTaq Man PCR法の応用が求められていた。本研究開始後、Taq Man PCRを用いたSNPs解析は急速な進歩をとげ、蛍光ラベルはFAM&TETからMGBプローブ導入によりFAM&VICに変化し、温度条件もアニーリング温度60℃のみで利用可能と簡略化が進んだ。一部の遺伝子ではネット上でオーダー可能なAssay on Demandなども導入されたが、至適条件を確立したはずのAssay by Designであってもプローブ、プライマーの配列内にSNPsが存在し、正確なタイピングが妨げられる場合などがあることが確認された。さらに、287bpという大きな欠失部位をalu配列に有するACE遺伝子のI//D多型をTaqMan PCR法で同定する方法を開発し、特許申請を行った(識別番号:504148642)。一連の技術開発に伴い、多くの循環器疾患の病態との関連研究に本手法を導入し、多くの成果を39の英文原著論文として報告し、日本人の疾患感受性遺伝子解析に大きく貢献した。本技術の確立により、一般研究室において、少数SNPsを大量タイピング(数百から数千検体)するには、TaqMan PCR法がコストパフォーマンスにおいても最適の方法となったと考える。
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