Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)の治療法として、ジストロフィンmRNAのアミノ酸読み取り枠のずれをスプライシングにエクソンのスキッピングを誘導して直し、ジストロフィン産生をもたらす治療が選択肢の1つとなっている。 これは、ジストロフィン遺伝子の遺伝子欠失のホットスポット領域に位置するエクソンを欠失したDMD患者の筋細胞で、欠失に隣接したエクソンのスキッピングを誘導することによりmRNAを修正してジストロフィンを合成しようとするものである。この基本的な技術であるエクソンのスキッピングの誘導はエクソン配列内のスプライシング促進配列の機能を阻害することにより可能である。ジストロフィン遺伝子には79個のエクソンがあるが、そのエクソン配列について検討した。スプライシング促進配列と考えられるポリプリン配列を有するエクソンと有さないエクソンが存在した。また、2次構造などについても考察したが、スプライシング促進配列のコンセンサス配列と考えられる配列は見い出されなかった。次いで、遺伝子欠失ホットスポット領域に隣接するエクソン44・46などのエクソンの塩基配列の中から、スプライシング促進機能を有すると考えられる配列をポリプリンなどの構造の特徴から選択した。そして、ショウジョウバエDSX遺伝子のスプライシング反応を応用したスプライシング促進配列解析用ミニ遺伝子に、先に合成した候補DNAを組み込み、その転写産物をHeLa細胞核抽出液と混じてスプライシング反応を進行させ、そのスプライシング促進機能を解析した。その結果、1部のアンチセンスオリゴヌクレオチドがエクソンスキッピング誘導効果をもつことが判明した。今後、筋細胞を用いてアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果を明らかにする予定である。
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