研究課題/領域番号 |
12557074
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
放射線科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増永 慎一郎 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (80238914)
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研究分担者 |
小野 公二 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90122407)
堀 均 徳島大学, 工学部, 教授 (90119008)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2001
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キーワード | 増殖死 / アポトーシス / 静止期腫瘍細胞 / Tirapazamine / Paclitaxel / 再酸素化現象 / 中性子捕捉化合物 / p53 status |
研究概要 |
従来、細胞の分裂死(増殖死)に密接に関連するとされる微小核出現率を指標に感受性を検出してきたが、アポトーシス死を指標とする感受性の検出法もまた、我々が開発した固形腫瘍内静止期(Q)細胞の感受性検出法に適用可能であることが、分裂死を主体とするものからアポトーシス死を主体とするものまでの4種類の腫瘍細胞系を用いることによって確認された。また近年、放射線増感作用に期待を持たれている新規抗癌剤のTaxane類(Paclitaxel)も、アポトーシス死及び微小核出現率を指標とした分析では、増殖期(P)細胞に対する放射線増感作用のみが強くQ細胞に対してはほとんど認められず、Q細胞の制御にはやはり低酸素細胞毒である生体還元物質の一種のTirapazamineとの併用が必要とされる事実も明らかになっている。血管新生阻害剤のTNP-470処置後の腫瘍に対して、低酸素細胞毒素の生体還元物質Tirapazamineを併用する放射線照射や抗癌剤投与が有効である事も明らかになった。SCCVII腫瘍においては、Tirapazamineやシスプラチン処置後には低温度温熱処置後と同様に腫瘍内の低酸素細胞分画が低下し、ブレオマイシン処置後では放射線照射後と同様に腫瘍内の低酸素細胞分画が上昇する事が明らかになり、分割して反復治療された場合の腫瘍内の酸素化状態の変化に応じた適切な処置の選択も多少なりとも可能になった。 さらにアポトーシス死及び微小核出現率の双方を指標として、新規に開発された中性子捕捉療法用熱中性子捕捉化合物であるl-p-Boronophenylalanine-^<10>B(BPA)のαアミノアルコール体l-p-Boronophenylalaninol(BPA-ol)が、固形腫瘍内全腫瘍細胞(P+Q)細胞とQ細胞の両方の感受性を共に高め、Tirapazamineと低温度温熱処置との併用でQ細胞の感受性をさらに高めることができ、有望な中性子捕捉化合物の一つであることが明らかになった。一方、腫瘍細胞のP53 statusとQ細胞の感受性との関係については、P53 statusがwild typeであろうとmutation typeであろうと、Q細胞とP+Q細胞との間の放射線感受性の差は、アポトーシス死及び微小核出現率を指標とする限り、ほぼ変化せず一定であり、腫瘍治癒の視点から見るとQ細胞の感受性を上昇させP+Q細胞との間の感受性の差を縮小させる努力がP53 statusにかかわりなく必要であることも明らかになった。
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