研究概要 |
生体内活性化により不安定なエンジイン構造を発生する10員環1,5-ジイン化合物、塩基共存下で活性なアレン体へ異性化するプロパルギルスルホン化合物、低酸素細胞増感作用を示す電子親和性ニトロアゾール構造を置換基としてもつプロパルギルスルホン化合物について、DNA鎖切断活性を評価するとともに低酸素腫瘍細胞の放射線治療に対する応用性を検討し、下記の成果を得た。 (1)アリル転位を経てエンジイン構造を発生する10員環1,5-ジイン化合物は低酸素細胞の特性である酸性雰囲気下でDNA鎖切断活性を発現するプロドラッグとなることを確認するとともに、脱離性のエステル基を導入した化合物は水酸基やメトキシ基を導入した化合物に比べて10倍ほど高活性であることを明らかにした。 (2)それぞれフェニル基および2-ナフチル基をもつ10員環1,5-ジイン化合物のDNA二重鎖に対するインターカレーション能はほぼ同程度であったが、後者の方が高いDNA鎖切断活性を示し、インターカレートした際の空間配置がDNA鎖切断活性に大きな影響を及ぼすことが示唆された。 (3)エンジイン化合物を簡略化して設計されたプロパルギルスルホン化合物の置換基として2-ニトロイミダゾール構造を導入した化合物はEMT6/KU腫瘍細胞に対して低酸素選択的な細胞毒性を発現するプロドラッグとなることを明らかにするとともに、DNA鎖切断活性、グルタチオン捕捉反応性、細胞膜透過性、および放射線増感活性を評価した。 (4)各種置換基を導入したプロパルギルスルホン化合物を新規合成するとともに、アレン体への異性化速度、DNA切断活性ならびにマウス腫瘍細胞に対する細胞毒性を評価し、活性化機構を明らかにした。 (5)プロパルギルスルホン化合物に電子吸引性基であるニトロ基を導入すると高いグルタチオン捕捉活性を得る一方で親水性が低下するが、新たな親水性基を導入することにより比較的高いグルタチオン捕捉活性を維持したままで親水性を回復することに成功した。
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