研究課題/領域番号 |
12557076
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研究機関 | 宮崎医科大学 |
研究代表者 |
川井 恵一 宮崎医科大学, 医学部, 助教授 (30204663)
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研究分担者 |
上原 知也 千葉大学, 薬学部, 助手 (10323403)
荒野 泰 千葉大学, 薬学部, 教授 (90151167)
長町 茂樹 宮崎医科大学, 医学部, 講師 (40180517)
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キーワード | 腫瘍特異的代謝亢進 / 癌の内部照射治療 / 放射性ヨウ素標識薬剤 / 悪性黒色腫 / メラニン形成 / チロシナーゼ / ヨウ素標識アミノ酸 |
研究概要 |
本研究では、腫瘍特異的代謝亢進に基づき腫瘍組織に集積・滞留し、癌の内部照射治療を可能にするヨウ素標識薬剤の開発を目的とする。特定の腫瘍細胞系における細胞内滞留性の向上を目的とした新規アミノ酸誘導体の開発は、本研究で目的とする癌の内部照射治療を可能にするヨウ素標識化合物設計に新たな視点を与え得る。 悪性黒色腫は早期より転移を起こし、極めて予後不良の疾患であり、その特異的診断法及び治療法の開発が切に望まれている。黒色腫細胞ではメラニン形成が異常に亢進していることから、これを標的とする抗腫瘍薬剤の開発が行われてきた。中でもフェノール環を有する含硫アミノ酸誘導体は、メラニン形成において必須の酸化酵素であるチロシナーゼとの基質親和性が高く、黒色腫細胞内に滞留することが報告されている。 そこで、腫瘍で特異的に亢進する代謝活性を指標とした新規ヨウ素標識アミノ酸開発の一端として、上記のメラニン形成に着目し、標識反応性、代謝安定性などの観点からチロシナーゼ基質類似体を化学修飾した4-hydroxyphenyl-L-cystein(4-L-PC)を標識母体化合物として選択して、その3位放射性ヨウ素標識体(I-L-PC)の黒色腫細胞への集積性及びその機序を基礎的に検討し、その有用性を評価した。 4-L-PCは合成により得た。放射性ヨウ素標識は短時間に終了し、高い標識率及び放射化学的純度で無担体標識体が得られる条件を確立した。B16黒色腫細胞を移植したC57BL6マウス体内分布では、I-L-PCはアミノ酸構造を有するものの、天然のアミノ酸とは異なり、いずれの正常組織への集積も低く、その結果、血中からの消失が非常に早く、早期に体外排泄された。一方、黒色腫組織への集積は軟部組織への集積性と比較して高く、滞留性も認められた。その結果、画像化に必要な対周辺組織比は既に臨床使用されている腫瘍診断薬を上回っていた。 これらの集積機序を検討する目的で黒色腫細胞を用いた集積阻害実験を行った。I-L-PCの腫瘍細胞への集積には、アミノ酸能動輸送機構の関与は少なく、ヨウ素及び硫黄原子の導入により増加した脂溶性により細胞膜を透過するものと考えられた。また、他の腫瘍診断薬と比較して、チロシナーゼ阻害剤による集積低下が顕著であることから、腫瘍細胞へ取り込まれたI-L-PCのチロシナーゼとの相互作用が示唆された。
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