研究概要 |
Graft versus Host Disease (GVHD)及びHost versus Graft Disease (HVGD)は移植治療上重篤な合併症であり、その治療法の確立が待たれる。我々はマウスモデルを用いてGVHD. HVGDの免疫学的解析を行ってきた。マウスの実験で得たことは1.血中1gE値の高値が臓器障害と関連があること。2.T細胞分化異常として胸腺double positive T細胞の減少、末梢へのdouble positive T細胞の出現があること、3.抗IL-4抗体にてGVHD. HVGDの臓器病変及び液性免疫異常(IgE, IgG1の高値)細胞性免疫異常(T細胞分化傷害)が制御できることを示した。これはGVHD, HVGDの病変にTh2細胞由来のサイトカインが重要であることを示唆する。 近年、TNF-αprocessing inhibitorであるmetalloproteinase inhibitorが致死的エンドトキシンショツクを予防する報告(Nature.1994)がありその臨床応用に期待が持たれている。我々はマウス急性GVHDの実験系でmetalloproteinase inhibitorがGVHDを制御し、生存率を著しく延長させることを見いだした。最近になってアポトーシスにおける重要な因子であるFas, FasLのprocessing metalloproteinaseが深く関与する事実が解明されGVHDの病態においてもFas, FasLの細胞傷害機構の重要性が指摘されている。我々は抗FasL抗体、抗TNF抗体を併用投与によりGVHDを制御出来ることを明らかにした。 また担癌マウスの実験系においてmetalloproteinase inhibitorがGVHDの制御のみでなくGVL効果も誘導出来ることが判明した。このことはこの薬剤が免疫制御+抗腫瘍効果が得られたことになり、その治療薬としても期待が持たれる。以上metalloproteinase inhibitorのGVHDへの治療薬としての意義は重要であり急性白血病、悪性リンパ腫などの治療において臨床応用に直結した研究といえる。
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