前年度の研究は、高選択的サイクロオキシゲナーゼ2(COX2)阻害剤であるセレコキシブ(Cel)のラット胎児動脈管収縮作用と腎組織変化に及ぼす影響を検討してきたが、これまでの研究ではCOX2投与前後の血中プロスタグランジン濃度の減少率(阻害率)と動脈管収縮および腎組織変化の関係も検討していなかった。本年度の研究目的は、COX2投与前後の血中プロスタグランジン濃度阻害率と動脈管収縮および腎組織の関係を検討した。COX2の薬物血中動態は血清0.1mlを0.25mlの0.2Nリン酸で処理し、サンプルは1%水酸化アンモニウムを用いて抽出、溶離液は窒素下にacetonitrileと0.OlM sodium acetateで溶解し、高性能流動クロマトグラフィーで分析した。COX2 10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kgおよび60mg/kg投与量における血中濃度は1.8μg/ml、2.4μg/ml、3.9μg/ml、4.0μg/ml、5.6μg/ml、5.5μg/mlとほぼ直線的に増加した。COX2血中濃度と動脈管および腎組織の障害との関係を解析の結果、COX2血中濃度の増加と腎尿細管障害と動脈管収縮は相関関係を認めた。低濃度のCOX2投与量(10mg/kg)でも腎尿細管障害が見られたのに対し、動脈管は30mg/kg以上で収縮し、より低投与量のCOX2で腎組織変化が出現する事が明らかとなった。なお、本年に行う予定であった妊娠兎を用いてのCOX2の胎生期動脈管に及ぼす張力変化を明らかにする実験は施行できなかった。
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