研究概要 |
単離した肝細胞集団の中から、多能性を持つ肝幹細胞をFACS(Fluorescence activated cell sorter)とモノクローナル抗体を用いた細胞分離法により濃縮・純化し、それらの機能解析を行うことを目的として研究を行った。まず、肝前駆細胞の同定を行い、c-Kit-CD49f+CD29+ CD45-TER119-細胞中に限定して増殖能の高いコロニー形成能を有した前駆細胞が存在し、肝細胞と胆管細胞という異なる細胞系列へと分化し得ることを明らかにした(Hepatology 32(6):1230-1239,2000.)。さらに、c-Kit-CD49f+CD29+CD45-TER119-細胞の画分化を段階的にすすめ、自己増殖能をも備えた幹細胞画分を明らかにすることを試みた。その結果、c-Met+c-Kit-CD49f+/lowCD29+ CD45-TER119-細胞中に限定して増殖能、多分化能、自己複製能、組織再構築能を兼ね備えた肝幹細胞(hepatic stem cell)が高頻度に存在することが判明した。そして、この肝幹細胞の自己複製に必須の液性因子がある細胞株の培養上清中に存在することを明らかにしており、現在タンパク精製によるクローニングを試みている。今後、さらに、この因子の肝幹細胞の分化・増殖・自己複製機構における役割を解析し、「臓器再生治療薬」として有用か否かを検証する予定である。
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