研究概要 |
目的:無毒化endotoxin(Monophopholyl Lipid A=MLA)耐性誘導により外科侵襲,とくに術後低酸素血症およびこれにともなう炎症,心肺機能を改善することができるか,これを調べた. MLAの入手先:MLAは米国EISAI社より入手した(ER-803058). ER-803058の毒性確認:1)従来のMLAと比較して,マウス脾細胞刺激によるTNF-α分泌活性は1/680であり,IL-10分泌活性は4倍(MLA:89pg/mL vs.ER-803058:400pg/mL)であった.2)Lipopolysaccharide(LPS,E.Coli O555B5)と比較して,マウス単核球細胞(RAW-264.1)刺激によるTNF-α分泌活性は,1/40であった(LPS10ng/mLの刺激では3400±257pg/mL;ER-803058 10ng/mLでは84.7±21.4pg/mL).以上より,in vitro細胞に対してER-803058は抗炎症作用をもつ. ER-803058によるendotoxin耐性の獲得(in vitro):1)ER-803058 100ng/mL,またはLPS100ng/mL,または同量のSalineで前処置をしたRAW細胞をLPS100 ng/mLで刺激し,TNF-α分泌能を指標に耐性獲得を評価した.2)Saline前処置によるTNF-α分泌レベルは3300pg/mLであるのに対して,LPS前処置では1400pg/mLであった.ER-803058前処置では3200pg/mLであった.つまり,ER-803058前処置によりRAW細胞ではendotoxin耐性は成立しなかった. ER-803058によるendotoxin耐性の獲得(in vivo):Wistar系雄性ラットにendotoxin 5mg/kg負荷したときの4時間の生存率は,ER-803058前処置をした場合,Saline前処置に比べて改善した(ER-803058前処置で100%,Saline前処置で0%). ER-803058によるhvpoxia耐性の獲得(in vivo):予備実験であるが,Wistar系雄性ラットにhypoxia(14%O2)を負荷したときの血圧およびPaO2レベルは,ER-803058を前処置した場合,Saline前処置に比べて高く維持できた.
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