研究概要 |
【対象と方法】胃癌根治手術54例の全郭清リンパ節に対して、病理組織学的診断とCEAに特異的なRT-PCR法による微小転移診断の両方を行った。特に、解剖学的なkey nodeである#7リンパ節に着目して、#7リンパ節の転移状況と他のリンパ節の転移状況、予後とを比較した。また、RT-PCR法の時間短縮を試みた。【結果】(1)#7への病理組織学的転移状況;#7転移陽性は3例(5.9%)で、単独転移はなく、いずれも1群リンパ節転移陽性で、2例(66.6%)は#7以外の2群リンパ節にも転移があった。#7が陰性の場合、1群リンパ節陽性は8例(33.3%)、#7以外の2群リンパ節陽性5例(10.4%)であった。(2)#7への微小転移状況;#7転移陽性率は16例(44.4%)で、#7以外の2群,3群リンパ節への病理組織学的転移は5例(31.2%)、微小転移は8例(50%)あった。#7陰性であれば、#7以外の2群リンパ節への病理組織学的転移はなく、微小転移が#8aに1例のみであった。(3)#7の転移予測正診率;病理組織学的診断で90.2%、RT-PCT診断で97.2%。(4)#7転移と予後(観察期間:中央値3.8年);Stage I,IIの#7への微小転移陰性19例の再発はないのに対し、微小転移陽性11例中に再発が2例みられた。病理組織学的転移陽性は1例のみで再発した。(5)術中迅速RT-PCR;組織採取から判定までの全行程を90分以内に短縮できた。【まとめ】リンパ系路の複雑な胃癌でも、#7をセンチネルリンパ節と想定すると、リンパ節転移の広がりを予測しうることが示された。とくに、病理組織学的診断にRT-PCR診断を加味することで予測正診率は向上し、#7微小転移陰性であれば、それ以上のリンパ節への反跳転移率は低いと考えられた。逆に、#7が微小転移陽性であれば、それ以上の微小転移の広がりや予後不良が予想され、D2以上の郭清と補助療法の追加が必要と考えられた。また、RT-PCR診断にかかる時間が大幅に短縮できたことから、#7リンパ節の術中の微小転移診断を指標にして至適郭清範囲を決定することへの可能性が示された。
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