研究概要 |
(1)膵癌切除例におけるMUC1-CTL療法:膵癌切除例に術後7日以内に、MUC1-CTLを静脈内投与し、その効果を検討した。16例に行い、14例には肝転移再発を認めたかった。細胞療法を施行しなかった33例(対照群)と細胞療法を施行した15例(CTL群)に分けて検討した。対照群では1年,3年,5年生存率は60.6,15.2,9.1%であった.対照群で肝転移再発死亡は16例(48.5%)で,肝転移再発時期が確定し得た12例の平均確認時期は10.3±9.5ヶ月、7ヶ月以内に8例(66.6%)が肝再発を生じていた。一方、CTL群の1年,2年生存率は80.4、21.4%であった.CTL群では術後最長36ケ月後の現在5例が生存しており、肝転移症例は2例(12.5%)と対照群に比べ有意に肝転移が少なかった(p<0.01)。細胞療法の併用により有意に肝転移を抑制し、1年生存率はCTL群で良好であった. (2)MUClペプチドによる第I相試験:9例の膵癌切除不能例を対象に、MUC1ペプチド療法の第1相試験を終了した。副作用は全く認めなかった。、1例に腫瘍マーカーの低下を認めたが,他の8例はPDであった。免疫学的効果の評価:個体差が大きく統計学的に有意差はないものの、Th1/Th2バランスの変化がTh2優位となり、抗MUC1 IgG抗体量が増加した症例を認めた。 (3)癌ペプチドワクチンの毒性と安全性およぴ免疫反応性(第I相試験):新細胞性免疫定性法にて反応性を認めたペプチドワクチンの中から良好なものを最大4種類選択し、各ペプチド3mgと不完全フロイントアジュバントを混和したペプチドワクチンを2週間隔で3回投与して本癌ワクチンの毒性/安全性評価とともにリンパ球の免疫反応性について検討した。現在8症例に対して施行中である。8例中6例で3回投与を終了し、局所の発赤、腫脹、接種後の発熱を認めたが、重篤な有害事象は認めなかった。臨床効果は5例でPD,1例でNCであった。この症例は8回投与後もNCである。
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