我々は、世界に先駆けてAML2ノックアウトマウスを作製し、その解析をおこなったところ、胃粘膜の高度の過形成を認めた。これまでノックアウトマウスで胃粘膜に表現型の変化が認められるものは極めて珍しく、転写因子であるAML2遺伝子が胃粘膜の発生や分化に重要な役割をはたしており、この遺伝子の異常が胃粘膜の脱分化や異常増殖や癌化に関連する可能性が考えられた。 我々はFISH法とRNAプローブを用いたin situ hybridization法を用いて、胃癌臨床検体40例のAML2遺伝子のコピー数、発現異常の解析を行なった。20%にコピー数の減少、40%に発現低下を認めた。また早期胃癌や腸上皮化生粘膜でのAML2の発現低下を高頻度に認めており、胃癌発生の初期にAML2が関与している可能性が示唆された。またレトロウイルスベクターを用いて胃癌細胞にAML2遺伝子導入を行ったところ約半数の細胞株で増殖抑制効果が認められ、ヌードマウスでの造腫瘍性が消失した。さらにAML2のプロモーター領域を同定し、塩基配列を調べたところCpGアイランドが多数存在することが明らかとなった。そこで胃癌細胞株6種のgenomic DNAをメチル化感受性制限酵素で処理した後にサザンブロットを行ってメチル化の有無を調べたところ、AML2発現低下とプロモーター領域のメチル化に正の相関が認められた。これより発現低下の機序はプロモーター領域メチル化による可能性が高いと考えられた。
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