大腸癌の予後判定に有用な遺伝子変化に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12557108
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 小西 文雄 自治医科大学, 医学部, 教授 (20142242)
• 研究分担者: 増渕 成彦 自治医科大学, 医学部, 助手 (30316533) ; 甲斐 敏弘 自治医科大学, 医学部, 講師 (40260830)
• キーワード: 大腸癌 / 異時性多発大腸癌 / Microsatellite instability / DNAメチル化

研究概要

本研究の目的である大腸癌術後の予後判定のうち、特に大腸癌術後の異時性大腸癌発生に関連する因子の検索として、散発性大腸癌におけるmicrosatellite insatabilityおよび、その発生機序として注目されているhMLH1遺伝子のpromoter領域におけるmethylationについて検索した。
大腸癌切除例56例を対象とした。MSIは5loci以上中2loci以上でMSIが認められた場合を陽性とした。メチル化の検索は、ゲノムDNAをNa-bisulfite処理後、hMLH1の転写開始部位から-685から+83までの66箇所のCpG siteを含む領域を、PCR-SSCP法とdirect sequence法により解析した。メチル化の程度は、全メチル化、部分メチル化、非メチル化とした。MSI陽性腫瘍(30例)と陰性腫瘍(26例)の比較ではメチル化77%vs31%(全メチル化30%vs.0%、部分メチル化47%vs.31%)、非メチル化23%vs.69%であり、MSI陽性腫瘍ではメチル化が高率に認められた(p=0.0005)。MSI陽性腫瘍および陰性腫瘍の背景粘膜では、部分メチル化42.3%vs.0%、非メチル化56.7%vs.100%(p=0.0001)であり、MSI陽性腫瘍では背景粘膜にも高率にメチル化が認められたが、すべて部分メチル化であった。腫瘍組織でメチル化陽性例は陰性例に比較して、多発(同時及び異時)大腸癌の発生が高率であった(19%vs0%:p=0.03)。特にMSI陽性大腸癌についてhMLH1のメチル化の有無と重複大腸癌の発症率の比較では、5/23例vs.0/7例であり、MSI陽性腫瘍のうちhMLH1のメチル化を認めない7例では多発大腸癌の発生は1例も認めなかった。【結語】hMLH1のプロモータのメチル化は術後異時性多発大腸癌発生のリスクマーカーの可能性が示唆された

研究成果

• [文献書誌] 宮倉安幸,小西文雄: "DNA replication errorは大腸癌手術後の異時性大腸癌発見の新しい予知マーカーとなりうるか?"日本外科学会. 101. 40 (2000)
• [文献書誌] 中坪直樹,小西文雄: "非家族性大腸癌におけるKi-rasとMicrosatellite Instabilitの関与"日本消化器病学会. 97. A128 (2000)
• [文献書誌] K.Shitoh,F.Konishi,: "MICROSATELLITE INSTABILITY (MS I) AS A MARKERIN PREDICTING THE MEACHRO"THE AMERICAN SOCIETY OF COLON. 43. A9 (2000)
• [文献書誌] Kazutomo Togashi Fumio Konishi: "Predictive Factors for Detectiong Colorectal Carcinomas in surveillance Colonscopy After Colorectal Cancer Surgery"Diseases of the Colon & Rectum. 43. S47-S53 (2000)
• [文献書誌] Kazutomo Togashi Fumio Konishi: "HUMAN ACF INDENTIFIED BY MAGNIFYING COLONOSCOPY"Gastroenterology. 118. A284 (2000)
• [文献書誌] Kazuhisa Shitoh,Fumio Konishi: "Frequent Activation of the β-catrnin-T of Signaling Pathway in Nonfamilial Colorectal Carcinomas with Microsatellite Instability"Genes, Chromosomes & Cancer. 30. 32-37 (2000)