研究課題/領域番号 |
12557109
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
河上 裕 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
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研究分担者 |
鈴木 ゆり子 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (40255435)
桜井 敏晴 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (20101933)
藤田 知信 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (20199334)
岩井 武尚 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (90111591)
北島 政樹 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (90112672)
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キーワード | マイクロサテライト不安定性 / 大腸癌 / 腫瘍抗原 / cDNAクローニング / SEREX法 / 腫瘍特異的変異ペプチド / 遺伝子診断 / 免疫療法 |
研究概要 |
本研究では マイクロサテライト不安定性(MSI)陽性大腸癌に対する免疫応答の標的抗原を解析して、診断や治療の開発に有用な分子を同定する。特にMSIにより起こるフレイムシフト変異のために産生される腫瘍特異的変異ペプチドに対する免疫応答に注目し、腫瘍特異的診断や治療に応用可能かを検討する。本年度はMSI陽性大腸癌細胞株3種からラムダファージ上にcDNAライブラリーを作製して大腸菌に発現させ、MSI陽性癌患者血清中のIgG抗体が認識する抗原蛋白をコードするcDNAの単離を行った。MSI陽性大腸癌患者6人の血清を用いて、それぞれ1.0×10^6個のプラークをスクリーニングして、合計965個の陽性プラークを得た。DNAシークエンスおよび遺伝子データベースサーチにより、147個の抗原遺伝子を同定したが、130個は既知蛋白、17個は未知蛋白をコードする遺伝子であった。そのうち57個について、各種癌患者と健常人血清中の各抗原に対するIgG抗体の存在を検討した。健常人血清には抗体を認めないが複数の癌患者血清に抗体が検出される抗原が7個同定された。そのうちの一つはMSI陽性大腸癌患者10人中4人の血清にIgG抗体が検出されたが、その他の血清には検出されず、MSI陽性大腸癌特有な反応である可能性がある。また、最初のライブラリースクリーニングに用いたMSI陽性大腸癌患者血清にのみ抗体が検出された抗原が41個同定された。そのうちの一つの抗原には、癌細胞にフレイムシフト変異を起こすマイクロサテライト異常がみつかったが、抗体はその患者だけに検出されており、MSI陽性癌細胞に産生される腫瘍特異的ペプチドに対する免疫応答が起こる可能性が示唆された。今後、これらの抗原の組織発現特異性、各種患者における抗体の存在、マイクロサテライト異常の存在と免疫反応との関係などに関して研究を継続する予定である。
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