研究概要 |
1)左心補助中の脱血様式の違いによる自己心の減負荷効果 左心補助中の脱血部位が不全心の心機能にどのように影響するかを検討した。10頭のヒツジにマイクロスフェアを用いて不全心を作成し、磁気浮上型遠心ポンプに接続した。左室脱血の時、ポンプ流量は心収縮期に増加し、拡張期に減少したが、左房脱血の時は定常流であった。左室駆出率は左房脱血ではポンプ流量増加と共に低下したが、左室脱血では75%補助まで駆出率は保たれていた。心筋酸素消費量はいずれの脱血部位でもポンプ流量増加につれて減少した。結論として、遠心ポンプの脱血部位は左室脱血の方が左室の駆出率を保ち、効果的に心筋酸素消費量を減少させることが判明した。 2)磁気浮上型遠心ポンプ自動制御法 生体の必要流量に合わせた遠心ポンプの流量制御法を考案した。ポンプの圧流量曲線において、ある変曲点(流量,および圧)を設定し,その流量より少ない流量で運転する場合を病的モード,多い流量で運転する時を健康モードと仮称し,それぞれの圧流量曲線を変化させた。モック回路および生体(ヒツジ)において,この制御法の妥当性を検討した結果。病的モードにおいては圧較差の上昇につれて電流、回転数が自動的に増加し、最低流量を確保する方向にポンプが作動したが、健康モードにおいては圧流量制御では生体の必要流量に見合ったポンプ流量の増加が得られなかった。 3)不全心回復の判定方法の検討 補助循環により病的心が回復する過程をポンプパラメータから推測する方法を検討した。回転数を変化させた時の左室圧、ポンプ電流を測定し、心不全時の心機能評価が可能かどうか検証した。補助流量50%から75%において左室内圧上昇にやや遅れてポンプ流量が増加した。流量のピークは左室圧が下行し、大動脈弁閉鎖の時期にほぼ一致した。電流の変化と流量の変化には位相のずれがあり、心室内圧を反映するには補正式が必要である。
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