研究概要 |
昨年度、ラット心再移植モデルにおいて、移植心冠状動脈硬化症に特徴的なケモカイン・受容体遺伝子の発現(IP10-CXCR3,RANTES-CCR5,MCP1-CCR2)を同定したので、本年度はその普遍性をラット大動脈移植モデルにて検討した。(第37回日本移植学会シンポジウムにて発表)。F344 to LEW, BN to LEW, ACI to LEW allograftの3種の組み合わせの慢性拒絶反応モデルを新たに作成した。何れの場合も移植後4週から血管病変が出現し、8週での血管狭窄率(%)は各々29.6+/-1.1, 25.0+/-5.3, 49.0+/-7.6(Isograft :1.8+/-0.6)であった。3種の組み合わせ全てで移植後1, 2, 4, 8週後に移植大動脈を摘出し(各点n=6)、血管狭窄度と全てのラットケモカイン、ケモカイン受容体遺伝子の発現量を定量PCR法(TaqMan法)で測定した。得られたケモカイン受容体遺伝子発現パターンは、心再移植の場合とほぼ等しく、かつ慢性拒絶反応に特徴的な3組のケモカイン・ケモカイン受容体遺伝子の発現量は、血管成分のみからなる大動脈移植片では、心筋成分が主体となる移植心の数倍高かった。したがって、我々が同定したケモカイン受容体遺伝子は慢性拒絶反応で普遍的に発現するのみならず、病変血管周囲に高く発現することが示唆された。実際、IP10とCXCR3の免疫組織染色を行うと、IP10は病変血管周囲に、CXCR3は病変内膜最内層に限局した発現を認めた。 以上、ラット移植心冠状動脈硬化症に特徴的なケモカイン・受容体遺伝子の発想が同定され、その診断的および病因上の意義が示唆された。同ケモカイン受容体の阻止による本症活療の予備実験を行っているが、確実な活療効果を得るには、更なる検討が必要である。
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