研究概要 |
ラット心再移植と大動脈移植モデルでの移植後動脈硬化症に重要なケモカイン・受容体システムを同定した。ラット既知ケモカイン・ケモカイン受容体遺伝子の全てに対して、定量RT-PCR法(TaMan assay)による遺伝子発現量側定系を新たに確立し、まず心再移植モデルの全時間経過中での血管病変の程度と各遺伝子発現量を検討した。その結果、IP10-CXCR3,RANTES-CCR5,MCP1-CCR2の3系が、移植後動脈硬化症の進展に重要と考えられた。 本知児の普遍性を検討するために、3種の異なったラットの組み合わせで大動脈移植を行い、同様に全ケモカイン受容体遺伝子発現量と動脇狭窄率の相関を移植後1,2.4,8週後に行った。その結果、上記3系の遺伝子発現量が移植血管の新生内膜形成と時間的および量的に大変良く相関することが、全ての組み合わせで確認された。また、特にIP10は病的血管周囲に限局して、CXCR3は新生内膜最内層に限局して発現することが明らかになった。ケモカイン・受容体系遺伝子発現の診断的および病因上の意義が示された。 以上の知見に基づき、選択的ケモカイン拮抗療法が移植後動脈硬化症の治療法となり得るかの予備的検討を行った。上記3系に対する拮抗物質と知られるviral MIP-11を大量合成すると同時に、抗ラット抗MCP1抗体を作成して、両者の効果を大動脈移植モデルで行った。しかし、残念ながら予備実験では有意な効果を得ることが出来ず、移植後動脈硬化症に対するケモカインをターゲットとした分子活療法の開発にはなお検討すべき点があると考えられた。具体的にはより効果的な拮抗物質の創出と局所療法の開発が必要であると孝えられた。
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