研究概要 |
多形膠芽腫(glioblastoma multiforme)は比較的高齢者に,前駆病変なしにde novoに発生する"primary(de novo)glioblastoma"と比較的若年者により良性の星細胞腫からの悪性転化の過程を経て発生する"secondary glioblastoma"の2つのサブセットに分類される.膠芽腫の両サブセットにおいて,DNAマイクロアレイによるmRNA発現情報を解析し,両サブセットの分子遺伝学的本態を明らかにし,生物学的,臨床的な差異を生じる機序を解明することを目的とする.本年度は以下の研究成果を得た. 1)Primary glioblastomaの典型例ではp53変異が存在せず,EGFRの増幅によりPI3Kのシグナルが亢進,これにPTENの変異が加わり,PKB/Aktの活性が極端に上昇していることが分子病態の中心であることが判明した. 2)Secondary glioblastomaの典型例ではp53変異が存在し,それにp16-CDK4-Rbの経路の異常が加わっていることが病態の中心であることが判明した. 3)DNAアレイの予備的実験でテストした8000個の遺伝子のうち,こうした病態の差により有意な差をもって動く遺伝子は3%-5%の250-400個であることが判明した. 本年度はこれらの遺伝子を含む550遺伝子を載せた専用アレイを作成し,より多くの症例で解析を実行し,mRNA発現情報の差を検討する予定である.
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