研究概要 |
多形膠芽腫(glioblastoma multiforme)は比較的高齢者に,前駆病変なしにde novoに発生する"primary (de novo) glioblastoma"と比較的若年者により良性の星細胞腫からの悪性転化の過程を経て発生する"secondary glioblastoma"の2つのサブセットに分類される.膠芽腫の両サブセットにおいて,DNAマイクロアレイによるmRNA発現情報を解析し,両サブセットの分子遺伝学的本態を明らかにし,生物学的,臨床的な差異を生じる機序を解明することを目的とする. この研究により以下の研究成果を得た. 1)両サブセットの分類のため、p53変異と逆相関を両サブセットで示すPTEN遺伝子の変異を同定するストップコドンアッセイを開発,膠芽腫に適用した(Oncogene) 2)両サブセットの分類のため、任意の遺伝子のストップコドン型変異の有無について迅速な遺伝子診断が可能な酵母Universal Stop Codon Assayを開発(Am J Pathol). 3)1300遺伝子を厳選し、スポットした、独自のアレイを開発、119種の癌細胞株のRNAサンプルにてそのアレイによる遺伝子発現プロフィールを検討し、良好な成績を得た。 4)U251MG,SF268,SF295,SF539,SNB-75,SNB-78の6種の神経膠腫細胞株において、p53,APC,PTEN遺伝子変異の有無を検討するとともに、上記DNAアレイにて遺伝子発現プロフィールを解析し、p53の有無によるサブセット分類と関係のある遺伝子85種を抽出した。 5)これらの解析には特徴選択アルゴリズムとニューラルネットワークの併用が極めて有用であった.現在,これら遺伝子を含む専用アレイにて、より多くの症例で解析を実行し,mRNA発現情報の差を検討中である.
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