研究課題/領域番号 |
12557117
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三谷 章 京都大学, 医療技術短期大学部, 教授 (50200043)
|
研究分担者 |
長谷川 護 ディナベック研究所, 所長(研究職)
田中 光一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80171750)
|
キーワード | 脳低温 / 脳虚血 / 海馬CA1 / ニューロン死防御 |
研究概要 |
虚血中あるいは虚血後の脳低温処置が虚血性ニューロン死を効果的に防御することが知られている。この防御機構として、虚血中の脳低温による保護効果については、低温が脳全体の物質代謝を抑えることにより虚血脳領域のエネルギー消費を減じ虚血侵襲を軽減することによると考えられる。しかしながら、虚血後の脳低温による保護効果については、その防御機構の解明が虚血性脳障害の治療法の開発に直接つながるものの、未明のままである。本研究では、脳低温が虚血性ニューロン死を防御するのは、脳低温がエネルギー消費を減じるだけでなく、積極的にニューロンをレスキューする動的な機構を誘導しているためという作業仮説を立て、その機構の存在を検証し,その実体となっている虚血脳保護遺伝子の検索および構造決定を行うことにした。 埋込型脳温トランスミッタープローブをスナネズミの脳に取り付け、自動脳低温コントロールシステムを用いて所定期間の脳低温負荷(32℃)を行った。復温後、脳温37℃にて5分間の前脳虚血を行い、所定の生存期間の後、脳標本を作製し、海馬CA1において生存ニューロン数を計測した。 24時間以上の脳低温処置を施した場合では、復温12時間後までの5分間前脳虚血に対して有意なニューロン死防御効果が観察された。その効果は、2ヶ月の生存期間の場合でも認められた。 以上の結果は脳低温によってニューロン保護機構が誘導されていることを示しており、脳保護効果に関与する遺伝子発現が想定された。そこで、マウスに脳低温負荷を行いDNA microarray法を用いて虚血脳保護効果のある候補遺伝子を検索した。現在、ストレスタンパク質関連遺伝子の発現などが観察されている。また並行して、その治療的実用性を検討するために必要な力価が高く細胞毒性の少ないセンダイウイルスベクターの調整を行っている。
|