研究概要 |
(目的)神経幹細胞あるいは神経前駆細胞が、gliomaの発生基盤となる細胞であるという仮説を検証する事を目的とした。 (方法)パラフィン包埋したgliomaの臨床標本を免疫組織学的に検討した。神経幹細胞もしくは神経前駆細胞由来ではないかと考えられているependymomaやmedulloblastoma培養細胞株の多分化能の有無について検討した。 (結果及び考察)(1)Glioblastoma組織内にGFAP陰性の小型腫瘍細胞が存在することが知られており、増殖能が高く、治療抵抗性であり、この細胞群がMusashi1を強く発現しており神経幹細胞の特性をもつと考えられた。(2)Pure oligodendrogliomaはGFAP陽性細胞が見られたが、Musashi1は陰性であった。一方oligoastrocytomaではMusashi1陽性細胞を認め、未分化神経細胞のマーカーと考えられるHu陽性細胞が混在した。Oligoastrocytomaはより未分化で多分化能を有する細胞から発生した腫瘍と考えらた。(3)Ependymoma培養細胞株はMusashi1,nestin, A2B5, GFAP陽性となり上衣細胞及び神経幹細胞のマーカーが陽性と考えられた。長期継代培養を行なうことにより、培養細胞は長い突起を伸ばすように変化し、神経細胞のマーカーが陽性になった。Medulloblastoma細胞株はMusashi1,nestin, synaptophysin陽性でGFAPの発現を免疫細胞染色で認めなかったが、神経幹細胞のin vitroでの分化培養条件に従って培養したところGFAP陽性細胞を認めることができた。以上(1)(2)(3)よりある種のgliomaは、神経幹細胞あるいは神経前駆細胞が発生起源ではないかと推測された。
|