研究概要 |
われわれは局所ターゲッティングが可能な磁性体リポソームを開発し,ハムスター骨肉腫を用いたin vivoの実験系において制癌剤の局所集約による抗腫瘍効果を確認した。このDrug Delivery System(DDS)の臨床応用に向け,ステルスリポソーム(磁性体ADRポリエチレングリコール(PEG)修飾リポソーム)の効果と,磁石の腫瘍内設置によらない可変電磁石による外磁場の効果について検討した。さらに遣伝子治療への応用のためベクターとしての磁性体カチオニックリポソームを開発し,遣伝子発現の磁気ターゲッティング効果についてin vitroで検討した。磁性体リポソームの場合血清ADR濃度が投与後1時間以降低下したのに対し,PEG修飾磁性体リポソームでは血清ADR浪度は比較的維持されており,血中滞流性が確認された。外磁場によるターゲッティング効果は磁石の腫瘍内留置よりも劣っていた。我々はDC-CholとDOPE(モル比3:2)から成る磁性体カチオニックリポソームを開発し,DNA/磁性体カチオニックリポソーム複合体を作製した。レポーター遺伝子としてプラスミドLacZを用いた。この複合体を磁力下に骨肉腫細胞へ導入した。磁力を加えずに遺伝子導入した場合と比べ,LadZの発現レベルは導入後3時間で高値を示したが,6時間以降ではほぼ同等であった。PEG修飾によるステルスリポソームは細網内皮系の取り込みの回避に有用であり,化学療法の副作用の軽減が示唆された。この治療の臨床応用に向けて可変電磁石の条件の最適化を検討しなければならないと考慮した。磁性体カチオニックリポソームを用いた遺伝子導入は,標的細胞の周囲にDNA/磁性体カチオニックリポソーム複合体を高濃度に集積させることにより導入効率が高まる可能性が示唆された。
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