遺伝子治療を臨床応用するためにはより安全なベクターが必要である。我々は比較的安全な非ウイルスベクターの開発を行った。まず3種のcationic polymerを用いて平板軟骨細胞様細胞株(HCS-2/8)に対してLacZ遺伝子を導入し、X-gal染色およびONPG法を用いて評価したところPolyamidoaminc(PAMAM)dendrimerが最も高い導入効率を示し、非ウイルスベクターの有用性を確認した。さらにこれとEBVプラスミドベクターとの複合体をラットの関節内に投与し、滑膜組織に遺伝子導入が可能であることを示した。次にin vivo electroporation法の有用性を評価した。ラット膝関節にマーカー遺伝子を組み込んだEBV-based plasmid vectorを関節内注射した後、同関節に特殊電極を用い電圧をかけ、最も導入効率のよい条件を検索した。その結果150Vの場合に最も高い導入効率を示し、これまでのcationic polymerを用いる方法と比べて極めて有効であった。 同時に細胞内に発現させることによりアポトーシスを誘導することができるApoptosis signal rcgulating kinasc(ASK)-1遺伝子に注目した。ヒトリウマチ滑膜細胞を平板培養し、これにASK1遺伝子を組み込んだアデノウイルスを感染させ遺伝子導入を行った。60時間後にHochest33342による核染色で観察すると、ASK導入群で約50%前後の細胞がアポトーシスを起こしており、コントロール群と比べて有意に高い割合であった。 本研究において、生体の滑膜組織への遺伝子導入方法として、in vivo clectroporation法の有用性を明らかにした。またASK-1遺伝子を増殖滑膜組織に導入することで滑膜炎に対する治療効果が期待できる可能性を示した。
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