研究概要 |
(1)アンチセンスDNAによる筋芽細胞の骨芽細胞への分化の促進 正常筋芽細胞にアンチセンスDNAを導入してカルポニン遺伝子の発現を抑制することにより、骨芽細胞への分化を促進することができるかどうかを検討した。ICRマウス大腿筋よりトリプシン(0.08%)処理により筋芽細胞(3000個/cm^2)を分離した。まず、40ng/ml以下の濃度のrhBMP-2には、筋芽細胞を骨芽細胞に分化させる作用がないことを確認した。rhBMP-2(40ng/ml)と10%牛胎仔血清存在下で、カルポニン遺伝子に対するアンチセンスオリゴDNA(マウスカルポニン遺伝子の翻訳開始コドンを含む18mers)(80mg/ml)を筋芽細胞に48時間作用させた後、アルカリホスファターゼ(ALP)活性染色により骨芽細胞数を定量した。対照として、センスオリゴDNAおよび変異アンチセンスオリゴDNAを用いた。アンチセンスオリゴDNA処理群にのみALP陽性細胞が出現したが(全有核細胞中のALP陽性細胞の比率:32.4±3.9%,n=5,mean±S.E.)、センスオリゴDNA及び変異アンチセンスオリゴDNA処理群ではALP陽性細胞を認めなかった。 (2)骨細胞特異的遺伝子発現ベクターの開発 カルポニンプロモーターによって複製が開始される複製可能型単純ヘルペスウイルスベクターを作製した。骨肉腫細胞に感染させると、カルポニン遺伝子を発現する骨肉腫細胞でのみ選択的なウイルスベクターの複製を観察し、細胞溶解活性を認めた。 (3)今後の研究計画 次年度は、上記アンチセンスオリゴDNAがin vivoで骨形成を促進し、実際に骨折治癒を促進させる効果があるかどうかをマウス肋骨骨折モデルを用いて検討する。また、ヒトカルポニンcDNAを用いてアンチセンスアデノウイルスベクターを作製する。
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