研究概要 |
(1)カルポニン遺伝子欠失マウスにおける骨折治癒の促進 マウス肋骨骨折の実験モデルでは、骨折治癒率はホモ型欠失マウスで有意に高く(ホモ型欠失マウス:50.6%(9/16肋骨),野生型マウス:25%(4/16肋骨),P<0.05)、カルポニン遺伝子の欠失によって骨折治癒が促進されることが明らかになった。また、レーザー顕微鏡を用いた骨形態計測により、カルポニン遺伝子欠失マウスでは、類骨量および骨量が有意に高く、骨形成速度も有意に速かった。一方、吸収面や破骨細胞面には変化を認めなかった。 (2)アンチセンスDNAによる骨折治癒の促進 6週齢雄ICRマウスに肋骨骨折を作製し、筋膜表面から骨折部局所へカルポニン遺伝子mRNAに対するアンチセンスDNAの導入を試みた。アンチセンスオリゴDNA(マウスカルポニン遺伝子の翻訳開始コドンを含む18mers)を37℃でゲル化するpluronic F127 gel(BASF, Parsippany, U.S.A.)に4℃で溶解し(2mg/ml)、その10mlを27G針を用いて、骨折48時間後に注入した。対照群には、センスオリゴDNA、5塩基を変異させたアンチセンスオリゴDNAあるいはゲルのみを注入した。骨折後6日での骨折部組織におけるカルポニンmRNAをRT-PCR法で定量すると、アンチセンスオリゴDNAの投与によってその発現は約70%低下した。骨折後3週での骨折治癒率は、アンチセンスオリゴDNA群:50.9%(28/55)、センスオリゴDNA群:31.3%(16/51)、変異アンチセンスオリゴDNA群:28.6%(4/14)、ゲルのみ投与群:37.5%(6/16)であり、アンチセンスオリゴDNA投与群で有意に骨折治癒の促進が認められた(P<0.05)。 (3)CAGプロモーターの下流にヒトカルポニンcDNAをセンスまたはアンチセンスの方向に連結し、RGD配列をファイバーに有するアデノウイルスベクターを構築した。 (4)骨細胞特異的に遺伝子を発現し複製する単純ヘルペスウイルスベクターを作成し、in vitroで骨肉腫細胞を破壊し得ることを確認した。 (5)カルポニンプロモーターを用いたin vivoでの体細胞遺伝子欠失を確認するため、Cre/loxP、トランスジェニックマウスを作成した。
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