慢性的に微小カニューレを橋部脳幹網様体(mPRF)、脊髄くも膜下腔に挿入留置いたラットを用いて、ACh作動薬のカルバコールとの比較の上でオキシコドンの作用を検討した。カルバコール(0.5〜4.0μg)のmPRFへの投与は、投与量に依存して、鎮静、鎮痛効果を示したが、オキシコドン(1〜30μg)では観察しなかった。一方、脊髄くも膜下腔投与では何れも投与量に依存した鎮痛作用を認めた。この効果はムスカリン性AChの遊離を介し、mAChの拮抗薬のサブタイプ(M_1、M_2、M_3)のうちM_2アンタゴニストのmethoctramineによって拮抗されたことから、オキシコドンはmACh受容体、主にM_2スブタイプ、を介して脊髄レベルで鎮痛作用をもたらすことが明らかとなった。 全身的投与のオキシコドンの力価はモルヒネの1/10とされているが、試験的な硬膜外腔投与での鎮痛効果の観察と動物実験結果を背景にして、同意を得られた患者を対象として、オキシコドンの脊髄硬膜外腔投与の手術後痛への効果を同量のモルヒネと比較した。硬膜外麻酔のために硬膜外腔内にカテーテルの留置された40例を対象として、モルヒネあるいはオキシコドンを手術終了時に2mgを硬膜外腔内にポーラス投与、その後3日間18mgを0.25%ブピバカイン溶液とともに投与した。手術後のVASで比較した鎮痛効果は両群で同程度であったが、悪心、嘔吐、掻痒感などのオピオイド特有の副作用はオキシコドン群で低頻度であるという結果を得え、本薬のポリマー化への効果に期待がもてる。
|