研究概要 |
Interleukin(IL)-16は遊走作用,炎症作用,免疫調節作用などを有するサイトカインであり,近年,多くの生理学的・病理学的状態において様々な役割を担うことが報告されている.今回我々はIL-16の子宮内膜症に対する関与を明らかにする目的で本研究を行った.患者の同意のもと,当科において腹腔鏡下手術を施行した128例(対照群34例,子宮内膜症群rAFS分類1/2期32例,3/4期62例)の腹腔内貯留液を採取し,ELISA法を用いてIL-16の濃度を測定,検討した,また腹腔内貯留液中より免疫担当細胞を単離・培養し,ヒト組替えIL-16の添加による免疫担当細胞からのTNFα,IL6等の産生能の変化を、ELISA法により培養上清を測定し解析した.腹腔内貯留液中のIL-16濃度は子宮内膜症3/4期群で478±63pg/mL(平均値±標準誤差)であり,対照群の257±18pg/mL(同)に比し有意に高値であった(p<0.05).子宮内膜症1/2期群では366±69pg/mL(同)と両者の中間の値をとった.またIL-16(200ng/mL)添加により、腹腔内貯留液中より単離した免疫担当細胞からのTNFα, IL6の産生能は各々数倍に有意に上昇した(p<0.001, p<0.05).腹腔内貯留液中のIL-16濃度は子宮内膜症の進展に伴い上昇する傾向が認められた.またIL-16は腹腔内貯留液中の免疫担当細胞からのサイトカイン産生を制御していることが示唆された.以上より,腹腔内環境におけるIL-16の変化は,子宮内膜症の発症、進展に関与していることが推測された. また、血管新生抑制物質として注目されている、IP-10の腹腔内貯留液中濃度を同様にELISAで測定した。腹腔内貯留液中濃度は3/4期群で1/2期群に比べ有意に低値を示し、血管新生の抑制系が十分機能しないことが、子宮内膜症の進展に関与していることが示唆された。
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