アロマターゼ阻害剤による子宮筋腫・子宮内膜症の治療に関する基礎的・臨床的研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12557136
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 生水 真紀夫 金沢大学, 医学部附属病院, 助教授 (30226302)
• 研究分担者: 瀬川 智也 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (40301197) ; 小池 浩司 金沢大学, 医学系研究科, 助教授 (70225340) ; 井上 正樹 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (10127186) ; 村上 弘一 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (20242555)
• キーワード: アロマターゼ / 子宮内膜症 / 子宮筋腫 / アロマターゼ阻害例 / エストロゲン / GnRHアゴニスト / 臨床治験

研究概要

前年度までの研究により、(1)子宮筋腫にアロマターゼが高発現していること、(2)GnRH analog投与による子宮筋腫縮小には組織アロマターゼの発現低下が関与していること、(3)子宮筋腫のアロマターゼの発現プロモーターがI.4でありプロモーター上流のGREが発現制御に重要であることが明らかとなった。これらの基礎的検討から、アロマターゼ阻害剤が子宮筋腫の治療薬となる可能性が示されたことから、本年度は学内倫理委員会の承認を得て、アロマターゼ阻害剤による臨床治験を開始した。インフォームドコンセントを得て、5名の患者に投与し4名で子宮筋腫体積の減少を確認した。血中エストロゲンの低下は軽微で、1例を除いて卵巣欠落症様症状の出現を認めなかった。子宮筋腫の縮小は投与開始2週間で確認されたが、その後は縮小速度が減少した。投与開始早期の筋腫径の縮小が、尿閉などの圧迫症状の早期軽快に極めて有効であった一例を経験した。アロマターゼ阻害剤投与後に子宮筋腫核出術を実施した症例の子宮筋腫組織を用いてPNA染色などの組織学的検討を行っている。現在これらの臨床治験成績の解析に取り組んでいる。子宮内膜症の検討も進めており、これまでに(4)卵巣子宮内膜症病変のアロマターゼの発現プロモーターがPIIであること、(5)卵巣子宮内膜症のアロマターゼの発現量は主として核内受容体であるSF-1によって決定されていること、(6)腹膜子宮内膜症病変のアロマターゼの発現プロモーターは、卵巣子宮内膜症と異なりI.4であることなどを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Shozu, M., Sbastian, S., Takayama, K., Hsu, W.-T., schultz, M., Neely, K., Bryant, M., Bulun, S.E.: "Prepubertal gynecomastia due to estrogen excess associated with novel gain-of-function mutations affecting the aromatase gene"New Engl.J.Med.. (in press). (2003)
• [文献書誌] Sebastian, S., Takayama, K., Shozu, M., Bulun, S.E.: "Cloning and Characterization of a Novel Endothelial Promoter of the Human CYP19 (Aromatase P450) Gene that Is Up-Regulated in Breast Cancer Tissue"Mol Endocrinol. 16. 2243-2254 (2002)
• [文献書誌] Shozu, M., Sumitani, H., Segawa, T., Yang, H.-J., Murakami, K., Kasai, T., Inoue, M.: "Over-expression of aromatase P-450 in leiomyoma tissues is driven through the promoter I.4 of aromatase P-450"J.Clin.Endocrinol Metab.. 87. 2540-2548 (2002)
• [文献書誌] Yang HJ, Shozu M, Murakami K, Sumitani H, Segawa T, Kasai T, Inoue M: "Spatially Heterogenous Expression of Aromatase P450 through Promoter II Is Closely Correlated with the Level of Steroidogenic Factor-1 Transcript in Endometrioma Tissues"J.Clin.Endocrinol Metab.. 87(8). 3745-3753 (2002)
• [文献書誌] Shozu M, Murakami K, Segawa T, Kasai T, Inoue M.: "Successful treatment of a symptomatic uterine leiomyoma in a perimenopausal woman with a nonsteroidal aromatase inhibitor"Fertil Steril.. 79(3). 628-931 (2003)