研究概要 |
主任研究者らは,これまで蓄積してきた抗精子抗体(精子不動化抗体)による免疫性不妊症の研究成果に基づき,精子抗原rSMP-Bを利用した避妊ワクチンの開発を試みた.現在までに,精子不動化抗体の対応抗原の一つと思われるrSMP-BをコードしているrSMPをターゲットとして以下の結果を得ている.(1)ラットの精巣ライブラリーをもとにPCRをおこなったところ,rSMP-Bをコードしている遺伝子として既に報告されているRSD-1と3個のアミノ酸が異なっていることが明らかとなった.(2)(1)で得られたrSMPをベクターに組み込み,大腸菌へ形質転換した.6クローンのインサートチェックを行い,塩基配列を見たところmutationを認めない1クローンを得た.本年度は以上の成果を元に以下の実験を行った.(3)(2)で得られたクローンを鋳型として発現用クローンの作成を行った.制限酵素部位を持つプライマーでPCRを行い,そのPCR産物を制限酵素で切断して2種類の発現ベクター(pcDNA, P3xFLAG-CMV14)に組み込み大腸菌に形質転換した.それぞれ24個のコロニーのインサートチェックを行ったところ,mutationのない3クローンが得られた.(4)発現実験のスクリーニングのために用いる抗rSMP抗体を,家兎に精子抗原ペプチドrSMP-229およびrSMP230を免疫することにより作成した.(5)(3)で得られたrSMP発現ベクターを,ヒト培養細胞Human Embrionic Kidney 293 (HEK293)に導入し,発現実験を行った.今後,(4)で得られた抗rSMP抗体および抗FLAG抗体を用いてスクリーニングを行い,rSMPの発現クローンが作成できれば遺伝子銃を用いた基礎的実験を開始する.
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