研究概要 |
主任研究者らは,これまで蓄積してきた抗精子抗体(精子不動化抗体)による免疫性不妊症の研究成果に基づき,精子抗原を利用した避妊ワクチンの開発を試みてきた。本研究において、精子不動化抗体の対応抗原である可能性が示唆されているrSMP-Bと抗精子抗体の対応抗原として同定された80kDa Human Sperm Antigen(HSA)を避妊ワクチンのターゲットとして以下の成果を得た。 (1)ラットの精巣ライブラリーをもとにrSMP-Bをコードする遺伝子に対するプライマーを用いてPCRをおこない、rSMP-Bをコードしている遺伝子が既にGenBank"808109"で報告されているRSD-1と4個の核酸が異なっていること(position 770-773,ATAT→position 770-777:CACTCTG)と、その結果3アミノ酸が異なること(His-Met→Pro-Leu-Try)を明らかにした。 (2)RSD-1遺伝子をp3xFLAF-CMV-14発現ベクターに組み込み、さらにヒト培養細胞Human Embryonic Kidney 293 (HEK293)に導入することにより、HEK293細胞におけるrSMP-Bの発現を抗FLAG抗体で標識したウエスタンブロット法で明らかにした。 (3)80kDa-HSAのアミノ酸配列からN末端ペプチドを含めた5種類の合成ペプチドを作成してそれぞれを家兎に能動免疫し、4種類の合成ペプチドに抗体が産生されることをELISA法で確認した。ヒト精子抗原をウエスタンブロット法により4種類の抗体を用いて染色すると、それぞれの抗体は約80kDaのバンドを標識し、また各々の抗体がラット、ヒトおよびサル精子を凝集することを明らかにした。 今後、遺伝子銃を用いて作成したrSMP-B発現ベクターをラットに能動免疫しDNAワクチンとしての効果を検討するとともに、80kDa-HSAについてもDNAワクチン開発のための基礎的検討を進めていく。
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