子宮体癌の発癌機構とRas、エストロゲンレセプターの関与を解析するために、NIH3T3細胞に哺乳類発現ベクターpZIOneoSV(X)ベクターに組み込まれた[12Val]K-Ras 4BcDNAとpSG5に組み込まれたえRのAF-2機能を阻害しdominant negative作用をもつS554fsER(DNER)を形質導入し、それぞれがコードする蛋白を単独にまたは共に発現する細胞株を樹立した(K12V細胞、DNER細胞、K12VDNER細胞とする)。K12V細胞造腫瘍能を持ち、ERの発現の増大とERの転写因子の亢進がみられた。DNER細胞に発現させた細胞はmock細胞と比べて形態学的にも、細胞造腫瘍能にも変化なかったが、活性化型K-RasとDNERを共に発現させた細胞(K12VDNER細胞)は細胞の大きさの増大と、多様細胞の数の増加が観察された。細胞増殖能は、著明に抑制され造腫瘍能は完全に消失した。K12VDNER細胞においてアポトーシスは誘導されなかった。形態学的に細胞老化を疑い、細胞老化特異的β-ガラクトシダーゼ染色を各細胞株に行ったところ、mock細胞、DNER細胞、K12V細胞はほとんど染色されなかったが、K12VDNER細胞は肥大化した多核細胞を中心に強く染色された。細胞老化で発現誘導の報告のあるp21発現を解析したところ、K12VDNER細胞で有意に発現の亢進がみられた。同じく、細胞老化で重要とされるp16に関しては、NIH細胞では、INK4a geneが欠失していることが報告されており、我々の使用した全ての細胞においてもp16蛋白の発現は見られなかった。以上より、K12VDNER細胞において誘導された細胞老化は、p21-依存性、p16-非依存性であることが示された。
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