研究課題
基盤研究(B)
従来の三次元画像化技術をさらに改良し、胎児や母体の動き等の影響を受けることなく高速でのスキャン可能な三次元超音波断層装置を開発した。開発された装置を用いて中枢神経系機能を反映する胎児の動作について観察・解析した。本装置を用いることで、妊娠初期胎児の四肢すべてを描出しつつ、その運動をリアルタイムに近い状態で観察することが可能であった。胎児の自発運動は妊娠7-8週頃にはじめて出現し、その中でも全身の運動であるgeneral movement(GM)は妊娠8-9週頃に出現し、生後5-6か月まで持続する運動である。新生児では動きの複雑さや優雅さの評価により脳障害を判定することが可能であると報告されている。胎児においても、Hepperらは妊娠10週の胎児においてGMを中心とした自発運動を超音波Bモード法により観察し四肢の動きに異常を認めた児が流産にいたった症例に多いことを報告している。しかしながら超音波Bモード法では胎児の四肢を同時に観察することは不可能であるため四肢の動きの関連を観察することはできなかった。正常例の自発運動に関して、四肢の動きを解析したところ妊娠初期胎児と新生児の四肢の動きが似ていることが証明された。以上より、新生児同様、妊娠初期胎児においても神経系の発達異常を診断できる可能性が示唆された。動作の異常例に関してその後の神経学的発達過程を検討する必要性が、今後残されている。一方、海馬を代表とした胎児脳の微細構造の観察においては、Bモード法によっても現装置では観察できる症例数が限られた。また、組織性状診断を行うためのROIの設定にも制限があり、今後の技術開発の課題として残された。
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