研究分担者 |
青木 大輔 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30167788)
久布白 兼行 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50170022)
塚崎 克己 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (40118972)
松浦 司郎 ヤトロン(株), 技術開発部, 課長代理(研究職)
|
研究概要 |
子宮体癌(以下「体癌」と略)における細胞診の判定は必ずしも容易ではなく、疑陽性例増加の一因となっている。そこで我々は、子宮体部より採取される細胞診検体を、モノレイヤー標本作製装置であるThin Prepを応用して処理した検体を用いて、体癌に特異的に発現する糖鎖抗原(SN-Ag)を標的とした酵素免疫測定法(EmC-EIA)を新たに開発し、体癌の補助診断法としての有用性を、手術検体、臨床検体を用いて検討した。手術時採取した体癌44例(G1:32例、G2:5例、G3:5例)、正常内膜10例の細胞診検体をThin Prepを利用してフィルター膜に吸着させ、細胞分散媒溶液に浸し、攪拌後、超音波破砕器により微小細胞断片化したものを測定検体とした。検体中のSN-Ag量の測定は、SN-Agと特異的に反応するモノクローナル抗体MSN-1を用いたSandwich EIAにより行い、SN-Ag量が測定できたものを陽性検体とした。体癌44例におけるEmC-EIAの陽性率は72.7%(G1:75.0%,G2:80.0%,G3:40.0%)であり、正常内膜12例の0%に比べ高い陽性率を示した。手術検体は、直視下で検体採取が行える為、検体への他の細胞の混入や、目的細胞の採り落としがないことから、手術検体において体癌例で正常例に比べ高い陽性率を示したこと、正常例で偽陽性率が0%であったことは、本EmC-EIAが細胞検体のSN-Ag量を正確に測定していることを示唆する結果と考えられた。また、臨床検体137例(体癌36例、内膜増殖症17例、正常内膜84例)の内、体癌例におけるEmC-EIAの陽性率は69.4%(G1:73.1%,G2:60.0%,G3:60.0%)であり、陽性率は手術検体とほぼ同じで、G1体癌で特に高い陽性率を示した。一方、正常内膜84例における陽性率は15.5%であり、手術検体に比べ偽陽性率の上昇を認めた。偽陽性例における検討より、内膜細胞採取時における頸管腺細胞の混入がその原因と考えられた。また、内膜増殖症17例の陽性率は35.3%と体癌と正常内膜の間であった。以上の検討より、本EmC-EIA法は細胞検体のSN-Ag量を測定するAssay法としてすぐれており、検体が正しく子宮腔内より採取されれば、体癌、特に細胞診判定に苦慮することがまれではない高分化型体癌おいて、細胞診の補助診断法として臨床応用可能であると考えられた。
|