研究概要 |
骨髄腫は,骨髄に原発する形質細胞の悪性腫瘍で,腫瘍細胞の産生する異常免疫グロブリンや破骨細胞活性化因子Osteoclast activating factor OAF(IL-1,IL-6,TNFβ)により,極めて多彩な臨床症状を呈する。本症は,高齢者に多く,OAF産生に伴う骨吸収により,病的骨折を併発しやすく,患者の自立度(ADL)やQuality of Life(QOL)を著しく低下させる。口腔内・下顎骨の原発やアミロイドーシスによる巨舌macroglossiaなどの口腔内病変をはよく知られており,歯科口腔外科領域においても重要な疾患である。しかし,これまでのところ,高齢者にも施行しうるような安全性の高い,また治癒の期待できるような治療法は確立されていない。 本研究において我々は,transforming growth factor-β(TGF-β)ファミリーメンバーであるBMP-2の骨髄腫細胞の増殖と生存に及ぼす効果を解析した。ヒト骨髄腫培養細胞6株および6例の患者より分離した骨髄腫細胞においてBMP-2による増殖抑制とアポトーシス誘導がみられた。さらに、これらの細胞内分子シグナルを解析し、BMP-2の増殖抑制に関しては、p21^<CIP1/WAF1>とp27^<KIP1>の発現レベルの増加とRbの低リン酸化がみられ、アポトーシス誘導に関しては、Bcl-X_Lの発現レベルの低下が観察され、これらの遺伝子発現の変化の関与が示唆された。Bcl-X_Lの発現レベルの低下にかんしては、STAT3によるBcl-X_L転写をBMP-2が抑制することが示唆された。
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