研究概要 |
免疫抑制剤の根尖病巣局所への影響を検討するため、Cyclosporin A(CsA)を投与したラットの根尖病巣をコンピュータ断層撮影により経時的かつ3次元的に解析すると共に、病理組織学的に検索した。いずれのCsA投与群(5,10および20mg/Kg/day投与群)も、生理食塩水投与群に比べ、根尖病巣の体積は経時的に有意に減少し、投与終了後は4週間で対照群と同程度の大きさまで増大した。また、CsAの投与量による病理組織像上での著明な相違はみられなかったが、20mg/Kg/day投与群における線維性組織内の細胞間質は、対照群に比べ顕著に膨大していた。 次に,ビーグル犬を用いて単一細菌感染による根尖孔外バイオフィルムモデルの開発に着手した。in vitro系でガッタパーチャ(GP)ポイントに対するバイオフィルム形成能を微細形態学的に評価し、GP表面のバイオフィルム形成にはEnterococcus faecalisが最適で、Fusobacterium nucleatumおよびPropionibacterium acnesはバイオフィルムを形成しないことを見出した。ビーグル犬の歯の根尖孔外にバイオフィルムを形成させる実験系において、E.faecalisが71.4%の頻度で単一分離・同定され、根尖孔外のバイオフィルム形成に最適であることが分かった。得られた結果に基き、E.faecalisバイオフィルムをビーグル犬の根尖孔外に形成した後、ステロイドの8週間投与により易感染性実験動物を作成し、根尖孔外バイオフィルムに起因する菌血症について検索する動物モデルを作成した。4週間の免疫抑制では、菌血症は惹起されなかったが、E.faecalis培養液,すなわちin vitro系でGPに形成されるバイオフィルム菌の10^3倍量(CFU/ml)の浮遊細菌を直接根尖孔外に接種すると、ステロイド投与時より持続的に菌血症が発症した。現在、投与濃度や期間を再検討し、菌血症について検索中である。
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