研究概要 |
咀嚼と嚥下機能を,一般歯科臨床に於いて,非侵襲的に,かつ簡便に検査し,機能障害の定量化による客観的な診断とそれに引き続く治療の効果の判定を可能にする咬合診断・評価システムを開発するこことを目標に本研究を計画した.本研究は,チェアサイドで実施可能で簡便な咀嚼能力評価システムの開発とその実用化を目標とした.口腔内にクラッチなどの測定装置を介在させずに自由な状態で咀嚼を行わせた際の咀嚼機能を,顔面皮膚上に貼付した標点の運動解析から,簡便かつ客観的に評価する方法を開発した.測定にはモーションキャプチャーVICON512を使用し,Sampling rate120Hzで各標点の立体的な動きを計測した.直径4mmの球状標点を顔面皮膚上に貼付した.貼付位置は前頭部に3点,口唇周囲に4点,オトガイに1点,頬部に2点,顎角部に2点,ならびに,カンペル氏平面の規定のため耳珠後縁の2点,左側鼻翼下縁に1点の計15点とした.計測した各点の運動を次のように上顎座標系に座標変換した.解析はカンペル氏平面の規定用の3点を除いた12点について行なった.12点のx, y, z座標をそれぞれ変量とし,36変量に関して計測開始から終了までの全フレームに対し主成分分析を行ない,第3因子までの因子スコアの変動を観察した.求めた因子スコアから安定した咀嚼が見られる部分を1500フレーム(12.5秒間)抽出し分散共分散行列を求め,固有値,因子寄与率,因子負荷量に関して検討を加えた.本システムの特長は無拘束で義歯装着患者の咀嚼運動が無侵襲かつ簡便に測定できる点にある.これまでの研究結果から,主成分分析による因子負荷量を用いた指標が,咀嚼機能を客観的に評価するための有用な指標になるこことが明らかとなった.
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