研究概要 |
近年,歯科医療に於いて使用されている補綴修復物に含有される金属元素や合成有機高分子が原因と考えられるアレルギー発症等などの報告が多くなってきており,従来生体にとってほぼ無為害性とされてきた材料でも,状況により注意を払う必要が漸増し,医療材料に含有する物質の溶出と生体への影響を把握し,的確に対応できる体制作りをすることが急務となっている。本研究は,各種金属イオンおよびレジン系物質が存在する環境下での培養細胞への物質取り込みとストレスタンパク発現の様相,および細胞に与える影響を検索し,その動態を予測するシステムを開発する基盤作りを目的とするものである。本研究の初年度に当たり,主設備品として小型の微量金属測定装置を設置し,培養細胞内に取り込まれた金属イオン濃度の測定が可能となった。この装置を用いて,アレルゲン性の高いニッケル,コバルト,クロムに加え,チタン,カドミウム等の金属イオンについて,新たに各種培養細胞における至適投与濃度の決定を行い,細胞増殖を阻害しない濃度を決定し,そのデータを原子吸光分光高度計を用いたデータ等と比較し,従来の実験・処理・測定方法と差異が少ないことを確認した。また共同研究活動を行っているノースカロライナ大学において,ストレスタンパク発現遺伝子を導入した細胞を使って同様の実験を行うと同時に本研究についての討議を行い,このタンパク質が金属イオンに対して細胞増殖への影響についても選択的にかつ,防御的に働いていることを確認した。
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