研究概要 |
インプラント埋入手術後には一定の治癒期間が必要であるとされているが,このガイドラインは全く確立されていない。そこで本研究では,埋入後の三次元的なオッセオインテグレーションを経時的に評価するための新しいモニタリングシステムの開発を目的とし,口内法X線写真から三次元的なオッセオインテグレーションを評価するシステムの構築を試みた。 本年度は以下の実験を行った。ニホンザル成猿2頭の下顎両側第一,第二小臼歯,第一大臼歯を抜去,3ヵ月後に同無歯顎部を摘出し,レジン包埋して骨ブロックを得た。同ブロックを口内法X線写真に準じて撮影,海綿骨領域を定め,それを4分割して関心領域(5×7mm)とした。これらの二値化像からは骨梁面積,骨梁周囲長,骨梁数,フラクタル次元を,骨格抽出像からは骨梁軸交点数,骨梁軸断端数をそれぞれ求めた。一方,スライス厚5mmで撮影したCT画像よりQCT法を用いて骨密度を測定,これを骨量の評価パラメータとした。また,スライス厚80μmのμCT画像より骨梁周囲長,骨梁数,フラクタル次元,骨梁軸交点数,骨梁軸断端数を求め,これらを骨梁構造の評価パラメータとした。さらに,これらの各評価パラメータ間の相関分析と重回帰分析を行い,統計学的に検討し以下の結果を得た。 1.骨量については,口内法X線写真の骨梁面積,骨梁数,骨梁軸の断端数がそれぞれCT画像の骨密度と有意な相関(p<0.05)を示し,そのうちの骨梁面積と骨梁数を用いて骨密度を近似する重回帰式(p<0.05)を得た。 2.骨梁構造については,口内法X線写真の骨梁数および骨梁軸断端数がμCT画像の骨梁軸交点数と,同写真のフラクタル次元がμCT画像の骨梁数とそれぞれ有意な相関(p<0.05)を示し,骨梁周囲長と骨梁数を用いてμCT画像のフラクタル次元を近似する重回帰式(p<0.05)を得た。 今後は,μCTのデータを用いた有限要素解析などを行い,三次元的なオッセオインテグレーションの評価を目指す。
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