研究概要 |
本研究は,現在まで嚥下障害の診断に用いられているVideofluorography(VF)法にかわり,嚥下にかかわる舌運動,頚部運動,喉頭挙上運動を利用して嚥下機能を非侵襲的に計測評価でき,VF法の及ばない在宅・訪問診療などでの利用に実際的なポータブルの嚥下機能評価システムを開発することを目的とした。 1.ポータブル嚥下機能評価システムの試作 中心間距離2cmで設置した2個のフラッシュダイヤグラム形圧力変換器(NEC三栄・9E02-P16),圧電式加速度変換器(NEC三栄・9F04)2個,デジタルオシロレコーダ(NEC三栄・RA1200)より成るポータブル嚥下機能評価システムを試作した。その際,圧力変換器を接着する材料の物理的特性,防水対策および感染防御策,加速度変換器の貼付部位について,本装置を実用化するために必要な多くの知見を得た。 2.試作システムによる嚥下機能評価 問診およびアンケートにより摂食嚥下困難,誤嚥性肺炎の既往を認めない成人30名について,本システムによる客観的嚥下機能評価結果を行った。その結果,本システムで嚥下舌圧の伝達する速度,舌運動と喉頭運動の時間的関係が定量的に評価できることが明らかとなった。さらに同意の得られた一部の被験者についてVFとの同時測定を行い,その結果および嚥下困難等の自覚症状を照らし合わせたところ,本システムは,全体の情報量はVF法による嚥下機能評価より制限されるものの,嚥下訓練の対象として取り上げられる主要な舌,喉頭の運動を適確に把握する評価指標を多く提供できる特色を有することが明らかとなった。
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