研究概要 |
1.転移性(HNT)及び非転移性(BHY)ヒト口腔扁平上皮癌細胞並びにヒト口腔小唾液腺由来腺扁平上皮癌細胞(TYS)にiNOS遺伝子をリポフェクチン試薬を用いて遺伝子導入した。iNOS遺伝子を過剰発現させた上記の口腔癌細胞(HT,BHY及びTYS)をin vitroで培養すると、NOの産生がGriess反応を用いて亜硝酸塩(nitrite:NO_2-)の産生を測定することにより検出された。この場合、口腔癌細胞の増殖抑制を認め、放射線照射を行うと、更に有意に細胞増殖が抑制され、著明なアポトーシスの誘導が検出された。 2.口腔癌細胞(HNT,BHY及びTYS)をヌードマウスに移植して発生した腫瘍に、iNOS遺伝子を遺伝子銃をを用いて導入した。iNOS遺伝子の発現はin situ hybridizationにより検出された。その結果、iNOS遺伝子が導入されたすべての腫瘍において、有意な増殖・転移抑制を認めた。また、iNOS遺伝子を導入した腫瘍では著明なアポトーシスの誘導が、TUNEL法により検出された。 3.HNT,BHY或いはTYSヌードマウス腫瘍にiNOS遺伝子を導入した場合、iNOS遺伝子が検出されない領域に存在する腫瘍細胞にも、アポトーシスの誘導が観察され、即ちbystander effectが検出された。この場合、腫瘍組織に浸潤している炎症細胞に、iNOSの強度の発現が、免疫染色により検出された。なお、iNOS遺伝子導入に伴う副作用は認められなかった。
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