振動刺激による歯周組織改造の賦活化機構の解析と臨床応用

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12557179
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 三木 美麗 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (10236820)
• 研究分担者: 三谷 英夫 東北大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50014220)
• キーワード: 振動刺激 / 共振点 / 歯周組織改造機 / メカニカルストレス / 破骨細胞 / プロスタグランジン / 歯科矯正学的歯の移動 / 歯周組織再生

研究概要

本研究は、振動刺激の歯周組織と骨組織への細胞レベル、分子レベルでの作用機序を基礎的背景から解明することにより、歯の移動や歯周組織の再生に最適な振動刺激の条件設定と負荷方法を見つけだすと共に、臨床的な応用のために振動力負荷装置を開発することを目的とする。結果として、以下の知見を得た。
1.6週齢のWiatar雄性ラットの上顎第一臼歯に頬側方向の持続的な矯正力を21日間負荷し、予備実験にて得られた60Hz,1.0m/s2の共振振動力を上顎部の印象採得を行い、歯の移動距離を模型にて測定した。21日間の歯の移動距離は、実験群(振動負荷群)は対照群に比較して統計学的に有意に移動距離が大きいという結果が得られた。同時に、分子生物学的学的検索のための組織切片を作成した。
2.Wistar系雄性ラットに、超弾性ワイヤーを用いて持続的な力を臼歯に負荷する固定式装置を装着し、実験期間終了後に通法に従って免疫組織学的に検討した。その結果、圧迫側のresorption lacunaeを含む骨吸収領域にOPGの強い陽性反応が、一方、圧縮側の歯根膜細胞にRANKLの強い陽性反応が認められた。さらにOPGmRNA発現は培養破骨細胞様細胞には認められなかった。培養歯根膜細胞に圧迫力を負荷すると、負荷力および負荷時間依存的にRANKLの遺伝子発現が増強したが、OPGの発現は変化せず、一定であった。このことより、歯の移動において、RANKLの発現は破骨細胞の形成を誘導し、歯槽骨吸収を選択的に引き起こすことが推測された。また、OPGは吸収領域に集積し、過剰な歯槽骨吸収を抑制する防御機構の役割を果たしていることが推測された。今後、振動力負荷により,これらの分布がどのように変化するか検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] H.KANZAKI: "RANKL Upregulation in the Compressed Area of Periodontal Ligament induces Orthodontic Tooth Movement"Journal of Dental Research. 81. A-135 (2002)
• [文献書誌] C.MATSUMOTO: "Synergistic human osteoclast differentiation inducing by the combined use of 1,25(OH)2D 3, RANKL, and M-CSF"Journal of Dental Research. 81. A-105 (2002)
• [文献書誌] M.NISHIMURA: "The Expression of Osteoproteger in in the Periodontal Ligament in Experimental Tooth Movement"Journal of Dental Research. 81. A-135 (2002)
• [文献書誌] S.TSUCHIYA: "Gene transfer into periodontal tissue by in vivo electroporation"Journal of Dental Research. 81. A-452 (2002)
• [文献書誌] Kanzaki, H: "Periodontal Ligament Cells Under Mechanical stress Induce Osteoclastogenesis by Receptor Activatior of Nuclear Factor κ B Ligand Up-Regulation via Prostaglandin E2 Synthesis"Journal of Bone and Mineral Research. vol.17, No.2. 210-220 (2002)
• [文献書誌] Yamaguchi N: "The induction of c-fos mRNA expression by mechanical stress in human periodontal ligament cells"Archives of Oral Biology. 47. 465-471 (2002)
• [文献書誌] M.CHIBA: "Establishing Immortalized Periodontal Ligament Cells from Oncogene Transgenic Rat and Gene Expression of Bone Metabolic Markers"Journal of Bone and Mineral Research. 17. S223 (2002)
• [文献書誌] 糠塚世毅: "ヒト歯根膜線維芽細胞の骨吸収制御機構に対する機械的伸展力の影響"歯科基礎医学会雑誌. 44巻5号. 113 (2002)
• [文献書誌] 千葉美麗: 日本実験力学学会第2回バイオメカニクス分科会講演論文集. No.2-1. 44-47 (2002)
• [文献書誌] M.CHIBA: "Molecular biological review on bone remodeling based on mechanical stress"the Quintessence. 21. 931-938 (2002)