研究概要 |
本年度は下記の手順に従ってActinobacillus actinomycetemcomitansならびにStreptococcus mutansの菌体表層多糖合成に関与する遺伝子のクローニングを行い、各遺伝子の機能の解明を進めた。 1.血清型a型からe型までの各菌の染色体遺伝子のSau3AI不完全消化断片をコスミドpMBLcosに組み込み、赤痢菌のdTDP-ラムノース合成遺伝子をプローブとして用い、プローブに反応する断片が組み込まれたコスミドを選択した。この結果、プローブと反応する遺伝子断片の塩基配列を調べ、存在するORFを失活してその機能を調べたところ、血清型b,c,d,e型の4種のA.actinomycetemcomitansについては糖鎖合成に関与する遺伝子群がプローブと反応する領域に存在することが示唆された。また、相同性検索の結果、この領域にグリコシルトランスフェラーゼと相同性の高いORFがいくつか認められたため、これらを大腸菌に組み込み各遺伝子の機能解析を試みる準備が調った。 2.S.mutansについては、赤痢菌のdTDP-ラムノース合成の最終段階を触媒するrmlD遺伝子と相同性を示す遺伝子をS.pyogenesの全塩基配列のデータベースで検索し、これをプローブとして用いて、糖鎖合成遺伝子群をコードする領域をクローニングすることができた。この領域には、ABCトランスポーターシステムの構成因子をコードする遺伝子と共に、グリコシルトランスフェラーゼと相同性の高い5つのORFが認められた。これらの遺伝子についても、大腸菌内に組み込んで、糖鎖合成における各遺伝子の機能について検討を行う段階に至った。
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